今回のアルス展示作品で一番気に入ったのが
Siren by Ray Lee (UK)
やっていることは単純で、
たくさんの、両端にスピーカがつけられた棒を回転させているだけ。
彼は展示をパフォーマンス形式で見せています。
まず、スピーカから単音を出していきます。
スピーカからの音はそれぞれ微妙に高さが違っていて、
複数のスピーカからの音は和音となります。
そして、そのスピーカ群をひとつずつ回転させはじめます。
スピーカが回転すると、「ウーン」という単音が、
ドップラー効果によって「ウィ~ン」と変化を持ち始めます。
そして、多くのスピーカが回転することで、その和音は様々に変容します。
さらに、スピーカは方向選択性を持っているので、
聞いている位置によってその音は様変わりします。
(HPでパフォーマンスの様子が見られます。)
一つ一つの音は単純ですが、集まった響きが織り成すハーモニーが素晴らしい。
機械によって紡ぎだされた雅楽のよう。
その荘厳な空間自体が共鳴していました。
空海の「五大皆有響(ごだいにみなひびきあり)」を地で行く展示です。
五大(地・水・火・風・空という環境世界)は単に視覚的に存在しているのではなく
その存在自体は響きであり、触覚的に交感、共鳴している。
それぞれの音は、一人一人の人間とも思える。
こんな人と人のハーモニーがある世界に生きられたら素敵だ。
パフォーマンスの時間は40分でしたが、あっという間でした。
不覚にも泣いてしまった。そして、すこし、悔しかった。
たくさんの回転スピーカ。
スピーカの調整をする Ray Lee。かっこいい。