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書く,掻く,話す,放つ

「書くことは掻くこと」だと

石川九楊(『筆蝕』という本の著者で書家)は言っています.

つまり,書くとは,世界を引っ掻いて,その痕跡を残すことだと.

紙に筆を滑らせるだけでなく,竹にナイフで彫る,砂に爪を立てる.

世界を削り取ることで何かを伝えようとする行為,それらは全て「書く」こと.

漢字のような表意文字だけでなく,

ひらがなやアルファベットのような表音文字であったとしても,

世界に刻み付けるという点で考えたら同じ行為といえます.

私たちは,掻かれたものを見ると,

それがどのように掻かれたのか想像してしまいます.

書道の専門家は,書かれた文字から,

それがどのように力を入れて書かれたのかわかるそうです.


話すことと書くことの共通点は,力であるような気がします.

同じく,石川さんは話すことは「放つ」ことだと言っていますが,

どのような力が込められて,それが放たれたのか,それが掻かれたのか

私たちは音声や書を知覚すると自動的に想像してしまいます.


一方で,日本語には殆どありませんが,音として発音しない文字があります.


閑話休題:発音しない文字だけをハイライトした本
Silenc: Highlighting the Silent Letters


いったいそれはどんな力を込められたのか.

それは呪術的なシンボルとして使われたのかも知れません.

力そのものではなく,力を指し示すモノとして.
by w_junji | 2012-10-02 00:45


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