残像とリアリティ

具体的に自分のやっていることを書いてみようかなと思いました。
自分のやっていることは目が動いたときに生じる残像の特性を調べることです。

こんな時計はご存知ですか?(ISM Inc. Fantazein)
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1本のLED(光る部分)が速く動くことによって目の中に2次元の残像ができるので、
1次元の光源(1本の棒)から2次元の画像を見せることができます。
すでに商品として売られています。

それで、自分のやっていることなのですが、
この時計の逆で、1本の棒が固定されていて、
棒が光っているときに目が動くと2次元の残像が目の中にできます。
上の時計は、眼が止まっていて棒が動く。
自分のやつは、棒がとまっていて眼が動く。
どっちの場合も眼の中(網膜というところ)には2次元の残像ができます。
なので、棒をがんばって動かさなくても眼が動きさえすれば2次元の画像が見せられる。
というものです。ただし、残像の見えている時間は一瞬ですが。
(こんな感じ)
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自分は、その残像がどんな風に見えるかを実際に目の動きを計測しながら調べています。

こういう方法で人が視覚情報を知覚するということは
普段、我々がどれだけものを見るために眼球を動かしているか(1秒間に3回も!)、
我々は受動的に情報を受け取っているのではなく、
自分から世界を能動的に見ているということを気付かせてくれます。

そして、人間は世界に物理的に存在しているもの(1本の棒)以上の
ものを自分の目の運動や脳によって知覚しているということを教えてくれます。
つまり、ぼくらが普段知覚しているもの、リアルに感じているものの多くは
実は、物理的に自分の外に存在しているもの以上に、
自分の中で生み出しているものが大きな役割を果たしている気がします。
例えば、精巧なファイナルファンタジーのキャラクタCGに違和感を感じてしまう
一方で、数本の線で書かれた似顔絵からでも
我々は豊かにその人の表情を読み取れたりします。

また、リアリティを再現しようと思うと
物理的刺激を再現する(例えばCGを細かくする)よりも、
その人のそのときの感情を伴った体験を再現することが重要となります。
そうやって体験を再現するためには、(体験は結局、人の心の中にしかないので)
物理的には情報が少なくても、人の心を動かすトリガーとなる情報が重要となります。
似顔絵の例では、人の顔の強調された特徴点でしょうか。

話はそれましたが、
自分がやっているような残像を使った情報提示って
いったい何の役に立つの?って感じですが、
2次元情報を出すのに固定された1本の棒ですむのでコストが安いとか、
残像を使っているので、空中とかにも絵が出せるとかあります。

最近では、舞台演出の中でも使ったりしています。
舞台って基本的に、お客さんは客席に座って舞台の情景を見るわけですが、
当然ですが、座る位置による違いを除けば、
殆ど同じ情景が全ての人に見えているはずです。
しかし、このディスプレイを使うと、ちょっと面白い演出が可能になります。
このディスプレイは眼が動いたときにしか、画像が見えないので、
それぞれのお客さんが眼を動かしたときに画像が見えます。
お客さんはそれぞれ違うタイミングで、違う方向に、違う大きさの眼の動きをするので、
お客さんそれぞれは異なる残像によって演出された舞台の情景が見えます。
つまりは、すぐ隣に座っている人でも、
眼の動きが違えば、異なる舞台の情景が見えます。
こんな感じ。↓(a)眼が動いてないとき、(b)眼が動いているとき
オレンジのつなぎのようなものを着たのがパフォーマーです。
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自分達の見ている世界、感じている感情とかって
ぜんぜん、絶対的なものじゃなくて
結局、自分の動き、精神状態、経験とか自分の内側からの情報を反映していて、
自分が外界を見ている、感じていると思っているものは、
実は自分の心の中を見ているのかもしれない。と思います。
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by w_junji | 2004-09-25 02:08 | 自己紹介の代わり


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