ウェルビーイング。(1)

『Positive Computing』 という本の監訳に携わった。
その過程で学んだこと、考えたことを、忘れないうちに備忘録として。

日本語タイトルは『ウェルビーイングの設計論』。
英タイトルはそのまま使わずに、「ウェルビーイング」というカタカナをつかった。

ウェルビーイングとは何だろう。
ウェルビーイングとはWell-beingのカタカナ。
Being well であること。

翻訳サイトにかけると「健康で安心なこと、満足できる生活状態」と
一言で言い換える言葉は日本語にない感じだし、
日本語に訳すと、その意味はこぼれ落ちてしまう気もする。

Positive Computing では3つのウェルビーイングについて書かれている。

1.医学的ウェルビーイング:
病気でないこと。心身が機能的に不全でなく維持されていることがウェルビーイング。

2.快楽的ウェルビーイング:
気持ちいいこと。いい気分であること。主観的な状態(State)としてのウェルビーイング。

3.持続的ウェルビーイング:
この意味を説明するのに、フローリシング(flourishing)という
日本人には聞きなれない言葉が使われている。
Flourish =「開花」という意味から転じて、
人間が心身の潜在能力の発揮し、意義を感じていること。
一言で言うと「いきいきとした状態」の実現としてのウェルビーイング。
必然的に、そのような人の特性(Trait)としてのウェルビーイングということもできる。

ここで難しいのは、ウェルビーイングは、
何か観察できる具体的なものと対応させることができない抽象的な概念として扱われていること。
つまり、複雑で捉えどころがないものの、多くの人がそれについて同意できるもの。
それ自体は観察できないけど、いくつかの観察可能なものによって構成されるものとして。
天気とか、景気、元気、勇気もそうかもしれない(なぜか「気」がつくものが多い?)。

また、ちなみに、StateとTraitというのは、
「一時的な状態」と「一貫性のある人間の性質」ということ。
怒っているのはStateで、怒りやすいのはTrait。
だから、状態としていい気分という快楽的ウェルビーイングと、
その人がうまく機能し、充実する持続的ウェルビーイングは異なるもの。

人をシステムとして考えてみると、心や体のシステムがきちんと動くというのが
医学的ウェルビーイングであり、病院で治療したり、予防したりすることができる。

そして、心のシステムが快楽を感じているというのが、快楽的ウェルビーイングであり、
ドラッグとかは、あとで悪いことが起こるとしても、その瞬間は快楽を感じることはできる。

持続的なウェルビーイングは、心身のシステムがうまく動いているというだけでなく、
個人のシステムが周囲の人(別のシステム)との間でうまく機能し、
その結果として、個人のシステムの中でも自己効力感や意義を感じている状態であり、
そして、それを持続するための心身の特性を持っていることでもある。

医学的なものは、システムが動くための基盤であり、
快楽的なものは、システムがある瞬間に快を感じている状態で、
持続的なものは、システムがうまく動作していくその過程そのもの。

だから、その評価法も少しずつ違う。
医学的なものは、健康診断だったり、質問表だったり。
快楽的なものは、気持ちを聞くアンケートや、そのときの身体の変化。
持続的なものは、充実感や関係性といった、それを実現する要因が達成されているかを計測する。

これら3つは、相反するものではなく、相補的なもの。
本でも、ウェルビーイングは多次元的に評価すべきであると強調されている。
むしろ、どう組み合わせて、その人にとってのウェルビーイングを実現するかが重要である。

だから、医学的なものに基づきながら、快楽的なものだけでなく、
持続的なもの、つまり、人間のフローリシングを「促進」していくための
情報技術と人間の関係性を探求するのが、ポジティブ・コンピューティング。


『ウェルビーイングの設計論 -人がよりよく生きるための情報技術』(BNN新社、2017、原題:『Positive Computing』)。著者:ラファエル・A・カルヴォ、ドリアン・ピーターズ、監訳:渡邊淳司、ドミニク・チェン、翻訳:木村千里(0-4章)、北川智利(5章)、 河邉隆寛(6章)、横坂拓巳(7,8,11章)、藤野正寛(8章)、 村田藍子 (9,10章) アマゾン https://www.amazon.co.jp/dp/4802510403/
本の内容に関するリンク、正誤表 http://www.bnn.co.jp/books/8473/
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# by w_junji | 2017-01-25 22:43

バランス

身体は緊張して、心臓の鼓動が速くなり、血圧が上がる。
瞳孔は散大し、呼吸は激しく。

筋肉は緩み、鼓動はゆっくり揺らぎを持ち、血圧が下がる。
瞳孔は収縮し、お通じもスッキリ。

「私」には二人いる。

それは
「言語と身体」と呼ばれたり、
「意識と無意識」と呼ばれたり、
「交感神経と副交感神経」と呼ばれたり。

「私」をどちらかに明け渡しながら、
波に乗るように、いったりきたり。

そんな風な感覚で「私」に乗ってみる。
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# by w_junji | 2016-01-06 23:26

思ったよりリアル

自分は、長く大学にいたから、
大学を卒業してからまだ10年くらいです。

自分の仕事として研究をしだしてから10年。
何が仕事なのかとたずねられたら、「研究者」です。
と答えられるようになって10年。

人と違うことをしよう、社会になかったものをつくろう。
と思って、はじめの5年間は、わけもわからず走って。
あとの5年間は、まだ、はじめに走った慣性があった。
それは、疲れて走れなかったというのもあったし、
それはそれで不思議と風を切るようなシアワセな感覚があった。

でも、まだ道ができたわけじゃないのだと思います。
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# by w_junji | 2015-09-28 23:16

ことばと技術

ことばと技術はどちらも、人々をフラットにしてくれるものであるとおもっていました。

でも、それは、一方で、意識だったり、文化だったり、閉じられたものを生み出すもとになる。

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# by w_junji | 2015-08-18 02:31

台湾

ちょっと立ち止まって、今の私たちを想像すること。

世界のどこかだと思っていたものは、いま、こことつながっている。
そして、いまだと思っていたものは、いつの間にか、過去になっている。

いろんなものが、いつの間にか、Deadlineを超えてしまう。

いまのわたしたちのできることを、少しずつでもすること。
それをやめないこと。

そして、今起きていることをきちんと感じること。
そうすることで、変わることがあると思う。

台湾立法院の様子
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# by w_junji | 2014-03-27 00:42

新年

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おめでとうございます。

昨年の秋ぐらいから、少しずつ、
自分のやっていることの基準を作りました。

今年は、

・使用者にとって自分ごとの価値があること

・未来の何かであるように感じられること

・本物であること

を考えて活動していきたいです。
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# by w_junji | 2014-01-02 17:39

最近

明日の自分,来月の自分,来年の自分のことを考える日があります.

少しずつ自分ひとりではできないことに取り組めるようになった気がします.

自分の周りにあったものが,編み物のように組み合わされて

もっと深く,もっと鮮やかに,そして,いつのまにか透明になる. そんな瞬間が好きです.

自分のピースが当てはまる場所を探すような生き方は難しい.

自分があまったところに入るようにすれば,よいような.

でも,何かは失わずに.

文化庁メディア芸術祭 富士の国やまなし展
「五感で旅するメディア芸術の世界」
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# by w_junji | 2013-10-17 02:10

おおがきビエンナーレ

心臓ピクニックのWSを行います.

日時 2013年9月8日[日] 11:00 - 11:45 13:00 - 13:45 15:00 - 15:45
会場 IAMAS
定員 各回12名(予約制)参加費無料、小学校4年生以上対象、各回45分程度
出演
渡邊淳司+坂倉杏介+川口ゆい+安藤英由樹

トーク
〈生命〉を感じる体験デザイン
日時 2013年9月8日[日] 17:00 - 18:30
会場 IAMAS
出演 秋庭史典|渡邊淳司
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# by w_junji | 2013-09-07 01:55

とどいているかんじ

自分のしたことがどこかへ届いている感覚

それが見えないものであったとしても,

届いていることを信じることができるか,感じることができるか.

目の前にあるものが,どこかを通ってみんなの何かに

それを信じられるか,

自分で投票したことが,テレビの向こうの国会に影響を与えることができるのか?

にしても,

それを信じられるシステムが必要だと思います.


ICC オープン・スペース2013(2013/5/25─2014/3/2 )
《心音移入》 安藤英由樹+渡邊淳司+佐藤雅彦

オノマトペ研究の射程ー近づく音と意味 ひつじ書房 (2013/4/30)

東京新聞 <育てよう 科学魂> 触覚の世界を体感する(2013/4/30)

日刊工業新聞(2013年06月07日) Yu bi Yomu

色彩から見る近代美術の脇本厚司さまの文章にて取り上げられました.

科学で体験するマンガ展@愛媛2013年8月2日(金)~9月1日(日)
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# by w_junji | 2013-08-05 09:48

文学展

文学・メディアアート展
2月9日~4月7日 @高知県立文学館

展示:
寺田寅彦×田畑哲稔+M.A.Verdaasdonk+渡邊淳司+安藤英由樹
「Slice of Life」

3月9日(土)、10日(日) ワークショップ:
文章の読み跡「触れて読む文章」
講 師:丸谷和史+渡邊淳司+安藤英由樹+植月美希

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# by w_junji | 2013-02-10 00:16

メディア芸術祭山梨展

文化庁メディア芸術祭 山梨展 ~つながる・かんじる・ひろがる~ 
2013年1月13日~1月20日@山梨県立図書館

今日からです。

会場の手前には城。
右手には雲からの覗く富士山。

叙景歌【じょけいか】 という歌の形式があるそうです。
自然の風物を主観を交えず表現した歌。
主観を交えずと辞書にはありますが、
名前を呼ぶことってすでに、その存在を認め祝福している。

周りにあるもの、周りの人の名前を呼んでみてください。
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# by w_junji | 2013-01-13 00:14

2013

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あけましておめでとうございます。

新年ですが、気持ちは過去。
1000年前、100年前に考えつかれたこと、
それらは、日本の社会が何かを解釈し、体得するために
重要な方法論だったのだと思います。

それらが、現在なりの形で現れ
少しでも私たちの社会がよき方向へむかうことを望みます。
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# by w_junji | 2013-01-04 22:32

最近の活動(終了後ですが)。

10月20日~11月4日 
ACM Multimedia 2012 Multimedia art exhibition at Nara Todaiji

11月3,4日 日本基礎心理学会第31回大会
シンポジウム 情動・共感覚・オノマトペ:感覚間インタラクション研究の展開
話題提供者:丸山慎(駒沢女子大学)、針生悦子(東京大学)、橋彌和秀(九州大学)
指定討論者:渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)、和田有史(食品総合研究所)

知人の本の表紙に自分たちの作品が使われました
Fusing Lab and Gallery: Device Art in Japan and International Nano Art
Sarah M. Schlachetzki
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# by w_junji | 2012-12-03 23:58

書く,掻く,話す,放つ

「書くことは掻くこと」だと

石川九楊(『筆蝕』という本の著者で書家)は言っています.

つまり,書くとは,世界を引っ掻いて,その痕跡を残すことだと.

紙に筆を滑らせるだけでなく,竹にナイフで彫る,砂に爪を立てる.

世界を削り取ることで何かを伝えようとする行為,それらは全て「書く」こと.

漢字のような表意文字だけでなく,

ひらがなやアルファベットのような表音文字であったとしても,

世界に刻み付けるという点で考えたら同じ行為といえます.

私たちは,掻かれたものを見ると,

それがどのように掻かれたのか想像してしまいます.

書道の専門家は,書かれた文字から,

それがどのように力を入れて書かれたのかわかるそうです.


話すことと書くことの共通点は,力であるような気がします.

同じく,石川さんは話すことは「放つ」ことだと言っていますが,

どのような力が込められて,それが放たれたのか,それが掻かれたのか

私たちは音声や書を知覚すると自動的に想像してしまいます.


一方で,日本語には殆どありませんが,音として発音しない文字があります.


閑話休題:発音しない文字だけをハイライトした本
Silenc: Highlighting the Silent Letters


いったいそれはどんな力を込められたのか.

それは呪術的なシンボルとして使われたのかも知れません.

力そのものではなく,力を指し示すモノとして.
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# by w_junji | 2012-10-02 00:45

意味の奥行き

わたしたちの色の世界は連続的です。
名前を付けたりすることがどこまで意味があるのかわからないけど,
言葉を持つことがその感覚に立体性をもたらしてくれる.

Tauba Auerbach’s RGB Colorspace Atlas Depicts Every Color Imaginable
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# by w_junji | 2012-09-21 14:11

火星の上で

今更ですが,火星の360度パノラマ.
すごいなーと思います.
となりですが,
人間にとってはずーっとずーっと向こうの星にも
地球と同じようなものがある.
それを知るだけでも.なんだかうれしい.

こちら
マウスを左クリックして動かすと動きます.


Solar Sinter by Markus Kayser
太陽光と砂を使った3Dプリンタ.これも火星の上で動くのかしら.

この作品は,今年,自分が審査員(JURY)をした
Prix アルスエレクトロニカ コンペンティションで入賞したものです.
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# by w_junji | 2012-08-25 02:24

書くことは描くこと

文章を書き始めたときには何をかこうとしているのかわからない.

でも,とりあえず文章にすることを続けてみる.

とりあえず文字にする.文字にする.モジニスル.

だんだん,意味の世界を離れて,少しずつ何かが浮かび上がってくる.

輪郭が描けるまで書けたら,あとは読む側の視点で全体を整える.

終わり.


文章をワードで書くときには,まず,何でもいいからモジを流し込む.

今まで書いた文でもよし.思いつきでもいいから,構造を考えずにひたすら書く.

それで,次に,全体を眺めてトピックごとに並べなおす.

さらに,トピックの塊を読みやすい順番に並べなおす

それで,あとは,流れたり,引っかかったりするように全体を整える.


文字を書くことと文章を描くことを分けて考える.

原稿用紙ではできなかったこと.
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# by w_junji | 2012-08-21 23:18

語られて伝えられること

書き言葉のない世界で物語はどうやって伝えられるのだろう.

記述しない世界の中で伝えられるものとはいったい何なのだろう.

それが正しく伝わったことはいったい誰が決めるの?



語られる,詠まれるなかで韻律に合う言葉だけが選ばれる 

という説があります.

何が伝えられるか,そのこと自体はあまり意味が無く

語り伝える,しゃべる中での韻律だけが伝えられ

そこにどんな言葉がのるかは韻律だけあっていればよい.

たとえば,Expression (表現) がいつの間にか,Impression(印象)になって伝えられたり.

韻律のほうが意味を記憶するより楽.

そして,韻律は身体が記憶するもの,身体が選んだもの.

伝承者の身体に選ばれたもの,身体に受け入れられたものだけが残っている.

残りたいものが残るわけじゃない.

受け入れられたものが自然に残っていく.
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# by w_junji | 2012-06-24 23:56

白夜

現在,夜の24時.でも,まだ空は十分明るい.
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スカンジナビアだから見られる空.
日本では絶対に見られない.

でも,空は日本までつながっているのです.
スカンジナビアの香りは風に乗って
いつの日にか,絶対に日本まで届くのです.
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# by w_junji | 2012-06-12 05:31

トントン

ドアがノックされる音,誰かを呼び止める手の動き.

何かが二度連続で行われるというのは自然のことではない.

しゃべり言葉と詩を分けるものは,詩には韻律があること.

それを口にすると,身体のリズムが生じる.

その意味ではなく,フォーマットによって抑揚が生じる.

コミュニケーションのカミサマはそんなところに降りてくる.

何を言っているかわからないけれど,それは正しいと思う.

なぜか知らないけれど,論理的に間違っている.

世の中,そんなことのほうが多い.

間違っているものにはリズムがない.

論理がないものにはエネルギーの動きがない.
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# by w_junji | 2012-04-13 23:10

神様からの領収書

年始にお祈りしてお願いしたこと.

受け取りましたよーって,領収書が来たりする.

神様にお祈りしてるのとはちょっとちがう.

非日常ではなくて,日常のどこかにいる

コミュニケーションのなかにいるカミサマ.

それに見守ってもらえてる感覚は

ありがたい教えではなく,

わたしたちの身体感覚の歓びにちかい.
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# by w_junji | 2012-02-26 19:39

一年がはじまって,またお休み

年の瀬のお休みが過ぎ,日常が始まったと思ったら,あっというまにお休み.

正しいもの,善いもの,美しいもの,それらは全て人の世の日常にはない.

日常から,ちょっと離れたところにがんばって行かないと見つからない.
実験したり,修行したり,大自然の中にいったりとか大変なことしないとたどり着かない.

正しいもの,善いもの,美しいものを
がんばって見つけたり,新しく作り出すのも重要だけど,
日常のなかで,人や自分とのつながりの仲で意味づけていくことが
できればよいのでは.と思います.

もう,絶対に正しい,善い,美しいものなどなくてもよいかもしれない.

世界にはもともとあるものしかなくて,人間の側が急に変わっている.
人とのつながりのなかで,
世界や人間の真善美を映し出す鏡をつくっていくことができればと思います.

今年の抱負.
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# by w_junji | 2012-01-07 22:54

Poetry of Motion

Ars Electronica export exhibition in Osaka
"Poetry of Motion"

大阪梅田のBreeze Breeze というショッピングビルでの一般向け展示です.

特に展示を見に来たわけではない人にとって,どう見えるでしょうか.
展示として,見てくださいと環境の中で主張するのではなく
どちらかというと,環境に溶け込みながらも,何らかの方法でそこを通る人に作用する.
体験型の展示,つまり,見ただけでは意味がわからないものは,
いるだけでは,溶けてなくなってしまう.
コミュニケーションを通してつながるしかない.

Heartbeat Picnic
Junji Watanabe, Yui Kawaguchi, Kyosuke Sakakura, Hideyuki Ando
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# by w_junji | 2011-12-12 00:34

見方

モネやルノアールの絵を片目をつぶって見ると,
絵の中のイメージが世界としての輪郭をもって立体的に見え出します.

人間の目は,少し横にずれて正面に向いて二つあるので,
両目で物体を見ると,右目と左目に入る網膜像にはほんの少しずれがあります.
そして,脳はそれを手がかりに奥行きを知覚します.

絵を見るときでも,その手がかりのおかげで
壁から絵の額縁がほんの少し前に出ているのを明確に知覚することができます.
ただし,それはデメリットもあって,
キャンバスという平面の上に,絵の具が置かれていることを強調してしまいます.

しかし,片目をつぶったときには,そのような奥行きの手がかりを使うことはできません.
額縁も,絵も網膜上では奥行き情報なく存在し,
そこから,絵の中にある情報から世界を再構成するしかないのです.
そんなとき,モネやルノアールの絵は脳の中に何か特別の世界を作り出すようです.

見方を変えることによって,絵の中に潜んでいた別の世界にアクセスできる.


今の展示,目を動かしたり,携帯カメラを振ると,光の中に現れる歌舞伎町らしからぬものたち.

歌舞伎町アートサイト(12月3日(土)まで)

「Cabinet of curiosities」
安藤 英由樹+渡邊 淳司+田畑 哲稔+Maria Adriana Verdaasdonk

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雨ざらしです.
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新宿という雑食な感じ.
新宿にないものを雑食に集めたコンテンツ.
Cabinet of curiositiesとは博物館学などで,
定義できない様々なものを集めた箱のことです.
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# by w_junji | 2011-11-29 00:46

onomatopoeia

「おの まと ぴーあ」 と発音するんですが,
英語で発表するのがとても恥ずかしい.

そこそこ長くオノマトペのこと研究したりしたのですが,
しゃべってみないとわからないことがあった.

そうなってみないとわからないこととか,最近多い.
パネルディスカッションで,思ってもみないことに怒っていたり.

声,身体,直感.それは,とても論理的に反応するのだと思う.
「わたし」にとって何が大事か.
よくよく考えてみると,知らないのは「わたし」の意識だけ.


大阪大学総合学術博物館 第14回企画展

脳の中の「わたし」と情報の中の<私>
―五感を揺るがす摩訶不思議なメディア技術―

会  期:2011年10月25日(火)~2012年 2月 4日(土)
       10:30~17:00 入場無料
       日祝および年末年始(12月29日~1月3日)休館
       ただし11月3日(木・祝),11月6日(日)は開館

会  場:大阪大学総合学術博物館 待兼山修学館


展示企画・制作:安藤英由樹
(大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻・准教授)

展示企画・制作協力
渡邊淳司(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)
藤木淳(国際メディア研究財団/科学技術振興機構さきがけ研究員)

展示企画・制作補助
前田 真由子,鈴木 寛和,嘉永 真未


現代社会では、自分の身体や思考、行動等さまざまなものが情報化される
とともに、「わたし」の知らぬ間に情報世界の中で新たな<私>が形成され
ています。たとえば、携帯電話でメールを打つときの“かな漢字変換予測機能”は、
使用者の思考の癖が携帯電話の情報空間に転写されたものだといえます。
そして、それが提示する予測結果は、時に今まで気付かなかった「わたし」の
思考様式をも明らかにし、もはや自分とは違う誰か(もうひとりの<私>)のもので
あるような気すらしてきます。
本展覧会では、脳の中にある「わたし」と、情報メディア技術によって生じた<私>の
新しいあり方を、人間科学と情報科学の融合研究の立場から捉えなおすことを試みます。
脳の中の「わたし」と、それがメディア技術によって再び提示された情報の中の<私>。
「わたし」と<私>は異なる存在として、この会場に立ち現れることとなります。
さあ、これからあなたは「わたし」と<私>の新しい人間関係を築かなくてはなりません。
それは果たして、楽しいものになるのか、苦しいものになるのか。私(安藤)の想像は止みません。


本展覧会は、脳の中の「わたし」と情報の中の<私>の関係によって四つのエリアに分けられています。

“情報化される「わたし」”
このエリアでは、脳の中の「わたし」が生み出す思考や行動の記録を視覚化しています。
それを見ることで、自分自身の思考や生活の様式が改めて意識されることでしょう。

●親指の記憶(2011):前田真由子、鈴木寛和、嘉永真未
  (協力:有元梨沙、鵜飼智子、竹村早紀、田中茉希子、中野悠、畑井恵、松岡佳世、松延徹人、守安勇)

●A day in the life(2011):藤木 淳、渡邊淳司 
  (協力:株式会社 ビデオリサーチ、藤木寛子)


“情報に消える「わたし」”
このエリアでは、画面に映し出されるたくさんの人の中から、自分と関係付けられた人を
見つけることを試みます。「わたし」が情報化されるときには、誰もが区別なく記録されます。
一旦、匿名の存在となった〈私〉と「わたし」の関係を証明するものは、どこにもありません。

●P055E5510N(2011):藤木 淳

●Parallel Lives(2010):安藤英由樹、草地映介、渡邊淳司


“何かになる「わたし」”
このエリアでは、「わたし」の顔がパーツに分けられて提示されたり、関係のないものに貼りついてしまいます。もともとは「わたし」の一部であったものが、いつの間にか「わたし」ではないものになってしまう違和感を体験してください。

●Eye remember you(2011):安藤英由樹、吉田知史、渡邊淳司

●宿り顔(2011):安藤英由樹、渡邊淳司、前川 聡(独立行政法人 情報通信研究機構)、吉田俊介(同)
  (協力:杉崎有)

“「わたし」から生まれる<私>”
最後のエリアでは、「わたし」の一部である心音がいつの間にか映像の中の人の心音と重なり合ったり、
「わたし」の影=<私>が意思を持って動き出します。
「わたし」から、情報メディアを通して<私>が生まれます。

●心音移入(2010):安藤英由樹、渡邊淳司、佐藤雅彦(東京藝術大学)
  (協力:関口台町小学校、東京外国語大学剣道部、近藤大祐)

●影法師(2011):藤木 淳、鈴田 健、渡邊淳司、安藤英由樹
  (協力:前田太郎、飯塚博幸)

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協力:南方熊楠顕彰館
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# by w_junji | 2011-11-01 01:05

発症する言葉

ある日,送られてきたプログラムを実行すると,
CPUが異常に熱くなり
HDが音を立てて回転し始めた.

次の日,送られてきた手紙を読むと,
脳が異常な速さで考えをめぐらし,
心臓が音を立てて鳴り始めた.


ある日,聞こえた音を声に出したら,
何を言っているか意味はわからなかったけれど,
なぜか,うれしくなった.

次の日,うれしくなったときに出た声を
人にも投げかけてみようと思った.
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# by w_junji | 2011-10-07 23:22

数の触感

共感覚の方で数字(色はついてない)を見ると
数字ごとに違った色がついて見えるという人がいます.

数字の文字の形によるのではなく
数という概念に対してこのようなことが起こるようです.

もし,数に触覚の質感があるのなら,
1は,ポコっとしている.
2は,サクっとしている.
3は,ピンとしている.
4は,ネバっとしている.
5は,フワっとしている.
など,でしょうか.

数の質感があるのなら,数が存在している感覚,実感もあってよいかもしれない.
「ああ,3てこんな感じですよね.」
という感覚を得るためには,どうすればよいのだろう...


最近の一般向け文章です.
・・・
触れる感覚の質感・実感に着目したコミュニケーション
渡邊 淳司

近年の電子機器やゲームでは、触覚に対する情報提示が注目を浴びています。
しかし私たちは、触覚を通じて情報を認識するだけでなく、触覚を通じてあらゆる
ものに豊かな質感を感じ、それが環境に実在することを確認しています。
リンク
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# by w_junji | 2011-09-25 22:54

Ars Electronica 2011 at OKcenter

オーストリアのリンツで行われているアルスエレクトロニカでの展示

Heartbeat Picnic (心臓ピクニック)
Junji Watanabe, Yui Kawaguchi, Kyosuke Sakakura, Hideyuki Ando
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ピクニックバッグから,聴診器と黒い箱が出ています.
聴診器を胸につけると,黒い箱が自分の心臓の拍動にあわせて振動し始めます.

普段,知っているけど,感じることのない「自分が生きてます」という感覚を
手の中にある箱を通じて感じる体験です.
自分の心臓の動きを手で感じたり,親しい人と交換したり.
ピクニックバッグを持って野外で運動したり,お酒を飲んだり,そんなことをしながら体験.
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心臓ピクニックで生じる感覚は,
言葉のやり取りと違って,身体から引き出された直の感覚.
「私は,ただそこに存在しています」という否定のないコミュニケーションの始まり方.
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アルスエレクトロニカは,展示だけでなくいろいろなパフォーマンスやカンファレンスが行われます.
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落雷してます(TESLA ORCHESTRA).


それと,こちら受賞させていただきました.
Prix Ars Electronica 2011 Interactive Art 部門 Honorary Mentions (入賞?)

empathetic heartbeat
Hideyuki Ando, Junji Watanabe, Masahiko Sato (JP)
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# by w_junji | 2011-09-05 20:35

YCAMシンポジウム

山口県でシンポジウムに参加します.

テーマは触感です.

話のタイトルは

「触れる感覚の言葉,触れる感覚による言葉」

感覚の「連想関係」(イメージの結びつき)や「連辞関係」(文法)
について話ができればと思います.


そういえば,「空海と密教美術展」やってます.
今回の話とも関連する言葉.


五大皆有響
十界具言語
六塵悉文字
法身是実相

五大:地・水・火・風・空のからなる森羅万象
十界:地獄・餓鬼・修羅・人・天・声聞・緑覚・菩薩・仏の世界
六塵:色・声・香・味・触・法という人間が認識する感覚

空海『声字実相義』より

・・・・・・
「TECHTILEという考え方:触感を表現する・触感で表現する」

2011-08-21(日)14:00-18:00
(関連展示:13:00-19:30)

場所 : YCAM(山口情報芸術センター)スタジオA

パネリスト:
名和晃平(彫刻家)
安藤洋子(ダンサー/ザ・フォーサイス・カンパニー)
渡邊淳司(研究者/NTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチスペシャリスト)
佐野明人(研究者/名古屋工業大学大学院工学研究科教授)
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# by w_junji | 2011-08-18 00:49

ワークショップ 「文章の読み跡」

自分は,レゴを組み立てるように文章を書く
のではなく,彫刻を削るように文章を書く派です.

とりあえず,関連しそうなことをばーっとワードファイルに入れて
それを組み替えたり,なかの言葉をきっかけにあらぬ方向に広げたりします.

冷蔵庫の中のものを眺めて,そのなかにあるものを組み替え,
工夫して何かを作るような感じ.

読むときは,ひたすら順番どおり,後戻りはしません.

出されたご飯は出された順に食べます.
こちらで勝手にまぜたり,残したりしないで,
そのまま口に入れ,噛み,歯ごたえや味の余韻を感じます.

読むことと食べることは似ているような.


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佐世保市博物館島瀬美術センター
平成23年度企画展「感じる文學 -動く・触る・薫る-」

★ワークショップ 「文章の読み跡」★

平成23年8月20日(土) 13:00~(約2時間程度)

文章の中にある文字の見えかたをいつもと少し変えてみることで、
文章を読むときに感じる「抑揚や調子」を、より深く体感できるワークショップです。

対象:中学生以上

講師:丸谷和史+渡邊淳司
(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

場所:佐世保市博物館島瀬美術センター中2階ギャラリー
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# by w_junji | 2011-08-13 21:55